ストーカー規制法違反|警告・禁止命令・逮捕を受けた方・されそうな方へ

「好きだから会いたかっただけ」「連絡を取りたかっただけ」——そのような気持ちからの行動でも、ストーカー規制法上の 「つきまとい等」や「ストーカー行為」として警告・禁止命令・逮捕の対象となることがあります。

ストーカー規制法違反は 非親告罪であり、被害者の告訴がなくても警察・検察が捜査・起訴できます。警告や禁止命令を受けた段階から、あるいは警察から連絡が来た段階から、 弁護士に相談することが最も重要な対応です。

📢 ストーカー規制法が2025年12月30日・2026年3月10日に順次改正施行されました

AirTagなどの紛失防止タグを被害者の所持品等に無断で取り付ける行為・位置情報を取得する行為が規制対象に追加されました(2025年12月30日施行)。②これまで被害者の申告が必要だった警告について、 警察が職権で行える制度が新設されました。③SNSを通じた監視・行動調査等のさらなる規制強化(2026年3月10日施行)も行われています。

ストーカー規制法とは

正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(平成12年制定)です。特定の者に対する恋愛感情やその感情が満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で行われる「つきまとい等」を繰り返す「ストーカー行為」を規制し、被害者の安全を守ることを目的としています。

法律上は「つきまとい等」と「ストーカー行為」を区別して規定しており、両者は適用される措置の種類が異なります。

概念 内容 対応措置
つきまとい等 8類型の個別行為(後述)のうち1回または数回の行為 警察による警告・都道府県公安委員会による禁止命令等(行政措置)
ストーカー行為 同一の者に対して「つきまとい等」を反復して行うこと(第2条第2項) 刑事罰(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)・逮捕

📌 「好意の感情・怨恨の感情」という目的要件

ストーカー規制法が適用されるのは、 「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で行われた行為に限られます(第2条第1項)。純粋なビジネス上の接触・近隣トラブル等にはストーカー規制法は適用されません。ただし、この「目的」の認定は客観的な言動・状況から判断されるため、「そのつもりはなかった」という主張が認められないケースもあります。

「つきまとい等」の行為類型——どこから規制されるか

ストーカー規制法第2条第1項は、規制対象となる「つきまとい等」として以下の8類型を定めています。これらを繰り返すとストーカー行為罪が成立します。

類型 具体的な行為例
①つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつき 自宅・職場・学校・よく行く店舗等の付近で待ち伏せする、帰宅途中を尾行する、自宅に押しかける
②監視・見張り 自宅や職場の周辺で見張りを行う、行動を監視していることを告げる、SNS等で行動を把握していることをほのめかす
③面会・交際等の要求 面会・交際・復縁を繰り返し求める、拒否されているにもかかわらず連絡を取り続ける
④著しく粗野・乱暴な言動 大声で怒鳴る、脅迫的な言動をとる、被害者の近隣で大声を上げる
⑤連続した電話・FAX・メール・SNSメッセージ等 拒まれているにもかかわらず電話・メール・LINE・SNSのDM・ブログコメント等を連続して送り続ける、無言電話をかけ続ける
⑥汚物等の送付 汚物・動物の死体・著しく不快感を与えるものを送付する
⑦名誉を害する事項の告知 被害者の名誉を傷つける事項を告げる、SNS等に投稿する
⑧性的羞恥心を害する事項の告知・送付 わいせつな言葉を告げる・送信する、性的な画像・文書を送付する

位置情報無承諾取得等(第2条第3項)——GPS・AirTagを含む

上記8類型とは別に、以下の行為も規制対象として定められています(第2条第3項・第3条)。

行為 具体例 改正状況
GPS機器等の無断取付・位置情報取得 被害者の車・かばん等にGPS機器を無断で取り付ける、GPS機器で位置情報を取得する 2021年改正で追加
紛失防止タグの無断取付・位置情報取得 被害者の所持品にAirTagなどのBluetoothを用いた紛失防止タグを無断で取り付ける、位置情報を取得する 2025年12月30日施行の改正で追加

⚠ 「浮気調査のため」「心配で確認したかった」という目的でも規制されます

AirTagやGPS機器を相手に無断で取り付ける行為は、恋愛感情・怨恨の感情を充足する目的がある場合にストーカー規制法の対象となります。「浮気が心配だった」「安全を確認したかった」という理由であっても、相手の承諾を得ていない位置情報の追跡は規制の対象となりますのでご注意ください。

ストーカー規制法違反の罰則

ストーカー規制法違反の罰則は、行為の内容・警告・禁止命令の有無によって異なります。

違反の内容 根拠条文 罰則 公訴時効
ストーカー行為罪
(つきまとい等の反復)
第18条 1年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
3年
禁止命令違反+ストーカー行為 第19条第1項 2年以下の拘禁刑
または200万円以下の罰金
3年
禁止命令違反
(ストーカー行為に至らないもの)
第20条 6月以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金
3年

⚠ ストーカー行為罪は「非親告罪」——被害者の告訴がなくても起訴されます

2016年の改正により、ストーカー行為罪は 非親告罪となりました。被害者が「訴えたくない」「告訴を取り下げたい」と申し出たとしても、検察官の判断で起訴することができます。被害者との示談が成立しても、それだけで不起訴が確約されるわけではありません。示談の成立は処分への重要な考慮事情となりますが、弁護士を通じた検察官への積極的な働きかけが不可欠です。

警告・禁止命令・逮捕——段階的な措置の流れ

ストーカー規制法では、いきなり逮捕されるケースのほか、警告→禁止命令→逮捕という段階を経るケースがあります。警告を受けた段階から弁護士に相談することで、逮捕・起訴を防げる可能性があります。

1

警告(第4条)

被害者からの申出または警察の職権により(2025年12月改正で職権警告が新設)、警察本部長等が行為者に対して「つきまとい等」をやめるよう警告します。警告に法的拘束力はなく、刑事罰でもありませんが、以降の行為が悪質性の高い証拠となります。

※警告を受けた段階で弁護士に相談することが重要です。この段階での適切な対応が、禁止命令・逮捕を防ぐ最善の機会です。

2

禁止命令等(第5条)

都道府県公安委員会が、つきまとい等や位置情報無承諾取得等の行為を禁止する命令を発します。行政処分であり、禁止命令に違反してさらにストーカー行為を行うと刑事罰(第19条:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金)が科せられます。2016年改正以降、警告なしで直接禁止命令を出すことも可能です。

※禁止命令に対して、行政不服申立て(審査請求)を行うことができます。

3

逮捕・捜査

つきまとい等を繰り返してストーカー行為罪が成立する場合、または禁止命令に違反した場合、警察に逮捕されることがあります。悪質性の高い事案(生命・身体への危険を伴うもの等)では、警告・禁止命令の段階を経ずに直接逮捕されることもあります。

※逮捕直後から弁護士のみが面会できます。ご家族はすぐに弁護士にご連絡ください。

4

起訴・不起訴の決定

行為の悪質性・反復回数・被害者への影響・前科・示談の有無・再犯防止への取り組みなどを踏まえて検察官が処分を決定します。ストーカー行為罪は罰金刑もあるため、略式命令(罰金)で終わるケースもあります。

※弁護士が示談の状況・反省の度合い・再犯防止策をまとめた意見書を検察官に提出し、不起訴・略式命令(罰金)の実現を目指します。

5

刑事裁判(起訴された場合)

起訴後は公開の法廷で裁判が行われます。ストーカー行為罪の法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金であり、初犯で被害者との示談が成立している場合は執行猶予付き判決となることも多いですが、禁止命令違反後の再犯・重大な危害が生じている事案では実刑のリスクがあります。

「やめたいのにやめられない」——行為を止め、離脱するために

ストーカー行為は、恋愛感情や怨恨の感情が強く作用するため、本人が「犯罪だとわかっていても止められない」という状況に陥るケースがあります。また、「これくらいは大丈夫」という認識のままエスカレートしてしまうケースも少なくありません。

行為を止めることが最も重要

弁護士に相談することで、何がストーカー規制法の対象となる行為か、どこで止めれば刑事罰を回避できるかを具体的に把握することができます。被害者への接触を完全に断ち切ることが、刑事事件化を防ぐ最も確実な方法です。

専門的なカウンセリング・相談機関の活用

ストーカー行為の背景には、依存的な恋愛パターン・精神的な問題が関係している場合があります。弁護士による法的サポートと並行して、精神科・心療内科へのカウンセリング・相談機関への相談を通じて心理的な問題に取り組むことが、再発防止と刑事処分の軽減の両面で重要です。専門機関への通院記録は、裁判所・検察官に再犯防止への真剣な取り組みとして提示できます。

📌 被害者への直接の連絡・接触は逆効果です

「謝りたい」「誤解を解きたい」という気持ちから被害者に直接連絡・接触しようとすることは、 ストーカー行為の継続・証拠の積み重ねとして評価され、状況を悪化させます。被害者への謝罪・示談交渉は、必ず弁護士を通じて行ってください。弁護士が間に入ることで、被害者の感情を悪化させずに謝罪の意を伝えることができます。

弁護士にできること

  • 警告・禁止命令を受けた段階での早期介入
    警告や禁止命令を受けた段階が、弁護士が最も効果的に介入できるタイミングです。この段階で行為を完全に止め、弁護士を通じて適切に対応することで、逮捕・起訴を防げる可能性があります。警告を受けたら速やかにご相談ください。
  • 被害者への謝罪・示談交渉
    ストーカー行為罪は非親告罪ですが、被害者との示談成立・宥恕の取得は検察官の処分に大きく影響します。被害者が強い恐怖・不安を抱えているケースが多いため、弁護士が丁寧かつ慎重に謝罪の意を伝え、示談交渉を進めます。被害者への直接の接触は禁物です。
  • 逮捕後の即時接見・身柄解放活動
    逮捕直後から接見し、供述方針のアドバイスと勾留回避のための意見書提出を行います。ストーカー事件では被害者への接触・証拠隠滅のおそれが高いと判断されやすく、勾留が認められるケースが多いですが、弁護士が具体的な接触断絶の誓約を示すことで早期釈放を目指します。
  • 再犯防止策の整備——専門機関への通院・環境の変化
    精神科・心療内科への通院開始・カウンセリングの記録・SNSアカウントの削除・転居など、被害者との接触が生じない環境の整備を弁護士と一緒に計画します。これらを検察官・裁判所に示すことで、不起訴・執行猶予の実現を目指します。
  • 不起訴処分・略式命令(罰金)の獲得
    示談の成立・反省の程度・再犯防止への取り組みをまとめた意見書を検察官に提出し、不起訴処分または略式命令(罰金)の実現を目指します。不起訴であれば前科はつきません。
  • 禁止命令に対する行政不服申立て
    都道府県公安委員会による禁止命令に対しては、審査請求(行政不服申立て)を行うことができます。禁止命令の内容・範囲が不当に広い場合など、弁護士が法的に争います。
  • 事実関係の否認——ストーカー規制法の目的要件の争い
    「恋愛感情・怨恨の感情を充足する目的がなかった」「業務上の接触だった」「つきまとい等の事実がない」などの事実関係を争う場合、証拠の精査・目的要件の不存在の主張を行います。

よくある質問

Q. 警察から警告書が届きました。これは逮捕されたわけではありませんか?

警告は行政上の措置であり、逮捕でも刑事罰でもありません。ただし、警告後も同様の行為を続けた場合、禁止命令の発出や刑事事件としての逮捕につながります。警告を受けた段階が弁護士に相談する最も重要なタイミングです。この段階で行為を止め、適切に対応することで、逮捕を防げる可能性があります。

Q. 相手が訴えを取り下げると言っています。それでも起訴されますか?

2016年の改正によりストーカー行為罪は非親告罪となっているため、被害者が「訴えを取り下げたい」と申し出た場合でも、検察官の判断で起訴することが可能です。ただし、被害者との示談成立・宥恕は処分を大きく左右する重要な事情です。示談の成立後も弁護士が検察官への働きかけを行い、不起訴処分の実現を目指します。

Q. 元交際相手に連絡を取り続けていました。ストーカー規制法になりますか?

拒まれているにもかかわらず連続して電話・メール・SNSメッセージを送り続ける行為は「つきまとい等」の類型(第2条第1項第5号)に該当する可能性があります。これを反復することでストーカー行為罪が成立します。「元交際相手だから」「復縁したかっただけだから」という事情は成立要件に影響しません。相手が拒否している以上、連絡は直ちに断ち切ることが最善です。

Q. AirTagを相手の車に取り付けてしまいました。どうなりますか?

2025年12月30日施行の改正ストーカー規制法により、AirTagなどの紛失防止タグを相手の所持品等に無断で取り付ける行為・位置情報を取得する行為が規制対象に追加されました。恋愛感情・怨恨の感情を充足する目的がある場合、これを繰り返すとストーカー行為罪が成立します。取り付けた事実がある場合は、速やかに弁護士に相談し、対応方針を決めてください。

Q. ストーカー規制法違反で前科がついたら、どのような影響がありますか?

有罪判決(実刑・執行猶予・罰金のいずれも)を受ければ前科がつきます。就職・資格取得・在留資格の更新などに影響が生じる可能性があります。また、禁止命令中に再度行為を行った場合はより重い刑事罰の対象となり、前科がある場合は量刑が重くなります。まずは不起訴・略式命令(罰金)での解決を目指し、弁護士と一緒に弁護方針を立てることが重要です。

Q. 「好きだから会いたかっただけ」でも逮捕されますか?

「好意の感情を充足する目的」はストーカー規制法の適用要件です。相手が拒否しているにもかかわらず自宅付近で待ち伏せする・連絡を取り続けるといった行為を繰り返した場合、「好意からの行動」であってもストーカー行為罪が成立し、逮捕される可能性があります。相手が嫌がっているサインを見落とさず、行為を止めることが最も重要です。