飲酒やひき逃げ等の自動車運転に関する罪

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飲酒運転・危険運転・あおり運転|自動車運転に関する犯罪で逮捕・捜査を受けた方へ

飲酒運転・危険運転・あおり運転は、「うっかりやってしまった」という軽い気持ちとは裏腹に、 非常に重い刑事責任を問われる犯罪です。特に人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪として最長で有期拘禁刑(上限20年)が科せられることがあります。

また事故を起こした・起こしていないにかかわらず、 被害者への誠実な対応・示談交渉・免許への影響など、逮捕後に対処すべき問題が複数同時に進行します。自動車運転に関する犯罪は、ご本人・ご家族ともに事態の深刻さを把握しにくい面があります。まずは弁護士にご相談ください。

自動車運転に関する犯罪の全体像

自動車の運転に関する犯罪は、主に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)」「道路交通法」の2つの法律によって規律されています。罪の種類によって法定刑・弁護方針が大きく異なります。

犯罪の種類 根拠法 主な対象 法定刑(最大)
危険運転致死傷罪 自動車運転死傷処罰法第2条 飲酒・高速度・赤信号無視等による死傷事故 負傷:15年以下の拘禁刑
死亡:1年以上の有期拘禁刑(上限20年)
準危険運転致死傷罪 自動車運転死傷処罰法第3条 アルコール・病気等の影響で支障が生じるおそれがある状態での死傷事故 負傷:12年以下の拘禁刑
死亡:15年以下の拘禁刑
過失運転致死傷罪 自動車運転死傷処罰法第5条 過失(不注意)による死傷事故 7年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
酒酔い運転 道路交通法第65条・第117条の2第1号 酒に酔った状態での運転(事故の有無を問わない) 5年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
酒気帯び運転 道路交通法第65条・第117条の2の2第3号 呼気1Lあたり0.15mg以上のアルコールでの運転 3年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金
妨害運転罪(あおり運転) 道路交通法第117条の2・令和2年新設 他車の通行を妨害する目的の危険運転行為10類型 通常:3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
著しい危険:5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
救護義務違反(ひき逃げ) 道路交通法第72条・第117条 人身事故後に救護せず逃走 10年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金

飲酒運転(酒気帯び運転・酒酔い運転)

飲酒運転は「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に区別されます。いずれも事故を起こしていなくても犯罪が成立します。

酒気帯び運転と酒酔い運転の違い

区分 基準 法定刑 違反点数 免許処分
酒気帯び運転(軽) 呼気1Lあたり0.15mg以上0.25mg未満 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 13点 90日間の免許停止
酒気帯び運転(重) 呼気1Lあたり0.25mg以上 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 25点 免許取消(欠格期間2年)
酒酔い運転 アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態(数値基準なし) 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 35点 免許取消(欠格期間3年)

⚠ 「少し飲んだだけ」でも酒気帯び運転になります

呼気1Lあたり0.15mgという基準は、ビール(500ml)を1〜2本程度飲んだだけで超える可能性があります。「酔っていない」「少しだけだから大丈夫」という自己判断は禁物です。また、 翌朝・睡眠後でも体内にアルコールが残っている場合があり、「昨夜飲んで今朝は大丈夫だと思った」というケースも酒気帯び運転が成立します。

飲酒運転で人を死傷させた場合——危険運転致死傷罪の適用

飲酒運転中に事故を起こし人を死傷させた場合、道路交通法の飲酒運転の罪に加えて、自動車運転死傷処罰法による罪も問われます。適用される罪名によって法定刑が大きく異なります。

自動車運転死傷処罰法第2条第1号(危険運転致死傷罪・飲酒)

アルコール又は薬物の影響により 正常な運転が困難な状態で四輪自動車等を走行させる行為により人を死傷させた場合:
負傷→ 15年以下の拘禁刑 死亡→ 1年以上の有期拘禁刑(上限20年)

自動車運転死傷処罰法第3条第1項(準危険運転致死傷罪・飲酒)

アルコール又は薬物の影響により 走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、よってその影響により正常な運転が困難な状態に陥り人を死傷させた場合:
負傷→ 12年以下の拘禁刑 死亡→ 15年以下の拘禁刑

📌 危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪——弁護方針の重要な分岐点

飲酒事故において、どの罪名が適用されるかは 弁護方針に直結する最重要の争点です。「正常な運転が困難な状態」(危険運転致死傷罪・最大1年以上20年以下)か「過失」(過失運転致死傷罪・最大7年以下)かによって、法定刑・量刑の幅が大きく異なります。弁護士は証拠を精査し、適切な罪名の適用を主張します。

発覚免脱罪——事故後に飲酒の痕跡を隠した場合

飲酒運転で事故を起こした後、アルコールの影響が発覚しないようにするためにさらに飲酒する・その場を離れるなどの行為を行った場合は、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車運転死傷処罰法第4条第2項)が成立します(12年以下の拘禁刑)。事故後の行動も厳しく問われます。

車両提供・同乗者・飲酒させた者の責任

飲酒運転の問題は運転者本人だけにとどまりません。道路交通法では以下の者も処罰されます。

立場 行為 罰則
車両提供者 飲酒運転となることを知りながら車両を提供した者 運転者と同じ罰則が科される(道交法第65条第2項)
酒類提供者・同乗者 飲酒運転となることを知りながら酒類を提供し、または同乗した者 酒類提供:2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
同乗:2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(道交法第65条第3項・第4項)

危険運転致死傷罪——飲酒以外の類型

危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法第2条)は、飲酒・薬物以外にも以下の行為類型が定められています。これらの行為によって人を死傷させた場合、負傷で最大15年・死亡で最大20年の拘禁刑が科される可能性があります。

類型 内容
飲酒・薬物 アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態での運転(第2条第1号)
制御困難な高速度 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(第2条第2号)
技能不足 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(第2条第3号)
妨害目的運転 人・車両等の通行を妨害する目的で行う著しく接近した走行・幅寄せ等(第2条第4号)
殊更な信号無視 赤信号その他の信号を殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行する行為(第2条第5号)
通行禁止道路進行 通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行する行為(第2条第6号)

⚠ 危険運転致死傷罪か過失運転致死傷罪かが重要な争点になります

危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪では法定刑が大きく異なります。たとえば「制御困難な高速度」に該当するかどうかは、走行速度・道路状況・車両の状態などから判断されますが、その認定は捜査機関と弁護側で争いになることがあります。どちらの罪名が適用されるかは量刑に直結するため、弁護士による事実関係の精査が極めて重要です。

あおり運転(妨害運転罪)——令和2年の法改正で厳罰化

令和2年(2020年)6月の道路交通法改正により、「あおり運転」を直接取り締まる「妨害運転罪」が新設されました。改正前は車間距離不保持・急ブレーキ禁止違反など個別の違反として処罰されていましたが、改正後は「他の車両等の通行を妨害する目的」で行う危険行為として一括して厳しく処罰されます。

あおり運転(妨害運転)の10類型

以下の10類型の行為を「他の車両等の通行を妨害する目的」で行い、道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行った場合が妨害運転罪にあたります。

類型 具体的な行為
①通行区分違反 対向車線へのはみ出し・センターラインを越えて相手車両に接近する
②急ブレーキ 後続車両に対して不必要な急ブレーキをかける
③車間距離不保持 前方車両に著しく接近して走行する(あおり走行)
④進路変更禁止違反 前方に割り込む・幅寄せをする
⑤追越方法違反 危険な方法で追い越しを行う
⑥減光等義務違反 対向車・前方車両に対してハイビームを照射し続ける
⑦警音器使用制限違反 不必要にクラクションを鳴らし続ける
⑧安全運転義務違反 蛇行運転・幅寄せ等の危険な運転を行う
⑨最低速度違反 高速道路等で他車をブロックするために著しい低速走行をする
⑩高速道路での停車 高速道路・自動車専用道路上で前方車両の進路をふさいで停車・駐車する

あおり運転の罰則

区分 罰則 免許処分
通常の妨害運転 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 違反点数25点・免許取消(欠格期間2年)
著しい交通の危険を生じさせた場合(高速道路での停車・閉じ込め等) 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 違反点数35点・免許取消(欠格期間3年)

⚠ 「相手が先に危ない運転をした」は妨害運転罪を正当化しません

「先に割り込まれた」「あおられたから仕返しした」という事情があっても、自らが妨害運転の10類型に該当する行為を行えば妨害運転罪が成立します。また、あおり運転を受けたと感じた場合は、速やかに道路脇に停車して相手車両を先に行かせる・警察に通報するという対応が適切です。相手への報復行為は自分が加害者になるリスクがあります。

ひき逃げ(救護義務違反)

交通事故を起こした場合、運転者には負傷者の救護・警察への報告という法律上の義務があります(道路交通法第72条)。人身事故を起こしながらこれらの義務を果たさず現場を離れる行為が「ひき逃げ」です。

道路交通法第117条(ひき逃げの罰則)

車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条第1項前段の規定に違反した者(救護義務違反)は、 10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。

ひき逃げは、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪と併せて問われることがほとんどであり、複数の罪が重なることで非常に重い量刑になります。また、逃走によって被害者の救護が遅れた場合には、その点も悪質な事情として評価されます。

⚠ 「当たったかどうかわからなかった」は通用しにくい

「気づかなかった」「当てた自覚がなかった」という弁解は、捜査機関には厳しく評価される傾向があります。事故後に現場から立ち去った事実・防犯カメラ映像・車両の損傷状況などの客観的証拠から、認識の有無が判断されます。事故を起こしたかもしれないと感じた場合は、直ちに停車・確認し、必要であれば警察・救急に通報することが最善の対応です。

無免許運転

免許を受けずに自動車を運転する無免許運転は、道路交通法第64条に違反する行為です(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。さらに、無免許の状態で過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪を犯した場合には刑が加重されます。

無免許運転の典型的なケースとして、免許停止・取消し中の運転、免許証の期限切れ、そもそも免許を取得したことがない場合などが挙げられます。また、飲酒運転・あおり運転との組み合わせは悪質性が高いとして、より厳しい処分の対象となります。

自動車運転犯罪の捜査・手続きの流れ

交通事故・飲酒運転・あおり運転の事案では、逮捕の有無・捜査のスピード・被害者への対応が異なります。事案の種類ごとに流れを把握しておくことが重要です。

1

事故・検挙・逮捕

飲酒運転は呼気検査で検知次第現行犯逮捕されることが多い。人身事故の場合は事故処理と並行して逮捕・送致の手続きが進む。あおり運転はドライブレコーダー映像・目撃証言から後日逮捕されるケースも多い。

※逮捕直後は弁護士のみが面会できます。ご家族は速やかに弁護士にご連絡ください。

2

送致・勾留

逮捕後48時間以内に検察へ送致。その後最大20日間の勾留が認められます。死傷事故・飲酒運転の場合、証拠隠滅・逃亡のおそれが高いと判断されやすく勾留が認められるケースが多いです。

※弁護士は勾留回避のための意見書提出・裁判官への申入れを行います。

3

被害者への謝罪・示談交渉(人身事故の場合)

人身事故では被害者への謝罪・損害賠償・示談交渉が最重要課題となります。示談の成立・被害者の宥恕(許すという意思表示)は、不起訴・執行猶予獲得に向けて大きく作用します。弁護士が間に立って誠実に交渉します。

※直接の接触は被害感情を悪化させる場合があります。示談交渉は必ず弁護士を通じて行ってください。

4

検察官による処分決定(起訴・不起訴・略式)

被害の程度・示談の有無・前科・悪質性などを踏まえ検察官が処分を決定します。過失運転致死傷罪には罰金刑があるため略式命令(罰金)で終わるケースもあります。危険運転致死傷罪・ひき逃げ等は罰金刑がなく必ず正式裁判となります。

5

刑事裁判・判決・免許の行政処分

起訴後は公開の法廷で裁判が行われます。刑事裁判とは別に、公安委員会による免許取消・停止の行政処分(聴聞手続き)も進みます。弁護士は刑事・行政処分の両面からサポートします。

弁護士にできること

  • 逮捕直後の即時接見・状況の把握
    逮捕直後からご本人に面会し、事実関係の確認・今後の手続きの説明・供述方針の検討を行います。ご家族へ現在の状況を報告し、不安を軽減します。
  • 罪名の争い——危険運転致死傷罪か過失運転致死傷罪か
    飲酒・高速度等の事案で最も重要な争点です。「正常な運転が困難な状態」(危険運転)に当たるかどうかを、呼気検査の数値・走行状況・ドライブレコーダー映像・目撃証言などを精査して主張します。罪名の差は量刑に直結するため、弁護士による事実関係の精査が不可欠です。
  • 被害者への謝罪・示談交渉(人身事故の場合)
    被害者に対して誠実に謝罪し、損害賠償・示談交渉を進めます。示談の成立・被害者の宥恕は、不起訴・執行猶予獲得に向けて最も重要な要素の一つです。被害者の感情に配慮しながら、弁護士が丁寧に交渉します。
  • 勾留回避・早期身柄解放の活動
    勾留を回避するための意見書提出・裁判官への申入れを行います。交通事件では、被疑者が職を持ち逃亡のおそれが低いことを主張することで、在宅捜査への切り替えが実現する場合があります。
  • 不起訴・略式命令(罰金)・執行猶予の獲得
    被害弁償・示談・反省の状況・前科の有無・事故態様などを踏まえた意見書を検察官・裁判所に提出し、より軽い処分の実現を目指します。過失運転致死傷罪では略式命令(罰金)での解決も目指せます。
  • 行政処分(免許取消・停止)への対応
    刑事手続きとは別に、公安委員会が行う免許取消・停止の行政処分に対しても、聴聞手続きへの同行・意見陳述などを通じてサポートします。
  • 事実関係の否認・証拠の争い
    「飲酒とは知らずに運転した」「ひき逃げしていない(気づかなかった)」「あおり運転ではなく普通の走行だった」など事実関係を争う場合には、ドライブレコーダー映像・防犯カメラ映像・目撃者証言・鑑定結果などを精査し、無実の主張・嫌疑不十分での不起訴を目指します。

よくある質問

Q. 一杯だけ飲んで運転しました。逮捕されますか?

呼気検査で0.15mg/L以上のアルコールが検出された場合は酒気帯び運転となり、逮捕・刑事事件となる可能性があります。「一杯だけ」でも体格・代謝・時間経過によっては基準値を超えることがあります。また、数値に関わらずアルコールの影響で正常な運転ができない状態であれば酒酔い運転として、より重い処罰の対象となります。

Q. 昨夜飲んで翌朝運転したのですが大丈夫でしょうか?

「寝たから大丈夫」という判断は危険です。アルコールは睡眠をとっても体内に残ります。アルコールの分解には個人差がありますが、飲酒量が多かった場合は翌朝になってもアルコールが残っており、酒気帯び運転が成立する可能性があります。飲酒翌朝の運転は避けるか、呼気チェッカーで確認することが必要です。

Q. 事故を起こしてその場から立ち去ってしまいました。どうすればよいですか?

ひき逃げ(救護義務違反)は、過失運転致死傷罪等に加えて問われる重大な犯罪です。逃走した後でも、自ら警察に申告(出頭)することで、事後的な対応として考慮される場合があります。まず弁護士に相談し、出頭の方法・タイミング・供述の方針を検討してから対応することが重要です。

Q. 交通事故を起こしたのは過失ですが、危険運転致死傷罪を適用すると言われています。

危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪では法定刑が大きく異なります。捜査機関が危険運転致死傷罪を適用しようとする場合でも、事実関係・走行速度・飲酒の程度などを精査し、過失運転致死傷罪の適用が相当であることを主張できる場合があります。罪名の争いは弁護士による専門的な対応が不可欠です。

Q. あおり運転をしてしまいました。相手が先に危ない運転をしていたのですが。

相手方の先行行為があっても、自らが妨害運転の10類型に該当する行為を行えば妨害運転罪が成立します。ただし、相手方の行為・経緯・走行状況・自らの行為の具体的内容は、事実認定・量刑において考慮される事情となりえます。事実関係を詳しく弁護士にお話しください。

Q. 飲酒運転で免許取消になりますが、仕事で車が必要です。どうすればよいですか?

免許取消の行政処分は、刑事裁判の量刑とは別に公安委員会が決定します。欠格期間(再取得できない期間)の長さは、違反の内容・悪質性・前歴などによって異なります。免許取消の行政処分に対しては意見の聴取(聴聞)手続きがあり、弁護士が同行して意見を述べることができます。仕事上の事情は聴聞での情状として陳述することができますが、処分の取消し・変更は容易ではありません。弁護士にご相談ください。