脅迫罪・恐喝罪・強要罪|SNSでの脅し・元交際相手への金銭要求・リベンジポルノ絡みの脅迫

「お前を殺す」「ばらすぞ」——言葉や文章による脅しは、相手に実害を与えていなくても 脅迫罪・恐喝罪・強要罪として刑事事件になります。SNS・メッセージアプリを通じた脅迫、別れ際の元交際相手への金銭要求、リベンジポルノを材料とした脅し、ストーカー行為に伴う脅迫など、近年は手口が多様化しています。

感情的になってしまった一言・一通のメッセージが後に大きな問題に発展するケースが増えています。警察から連絡が来た段階・任意出頭を求められた段階で、まず弁護士にご相談ください。

脅迫罪・恐喝罪・強要罪——3つの罪の全体像

「脅す行為」に関連する犯罪には、脅迫罪・恐喝罪・強要罪の3種類があります。どの罪が問題になるかは、「金品等を要求したか」「相手に何かをさせようとしたか」という行為の目的と結果によって決まります。

罪名 条文 行為の内容 法定刑 罰金刑 未遂罪 公訴時効
脅迫罪 刑法第222条 生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告知して人を脅迫する 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 あり なし 3年
強要罪 刑法第223条 脅迫・暴行を用いて義務のないことをさせ、または権利行使を妨害する 3年以下の拘禁刑 なし あり 3年
恐喝罪 刑法第249条 人を恐喝して財物を交付させる、または財産上不法の利益を得る 10年以下の拘禁刑 なし あり 7年

⚠ 恐喝罪・強要罪には罰金刑がありません

恐喝罪・強要罪には罰金刑の定めがないため、起訴されれば必ず公開の正式裁判となります。恐喝罪は最長10年の拘禁刑と刑事罰の中でも重く、初犯であっても実刑となるリスクがある犯罪です。脅迫罪には罰金刑があるため略式命令(罰金)で終わるケースもありますが、いずれも有罪判決は前科となります。

脅迫罪とは(刑法第222条)

刑法第222条(脅迫)

第1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
第2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

脅迫罪の成立要件

脅迫罪が成立するためには、次の要件をすべて満たす必要があります。

要件 内容
①害悪の告知 相手に「害を加える」ことを告げること。「殺す」「傷つける」「ばらす」などの言葉が典型。書面・メッセージ・SNS投稿も含まれる
②害悪の対象 生命・身体・自由・名誉・財産への害であること。対象は本人または本人の親族(配偶者・子・兄弟姉妹等)。交際相手・友人は含まれない
③一般人が畏怖するに足る程度 相手が現実に恐怖を感じたかどうかは不要(抽象的危険犯)。一般的に畏怖させるに足る内容であれば成立する
④故意 脅迫する意図があること。「冗談のつもりだった」という主張は、内容・態様によって認められない場合がある

脅迫罪の典型的な事例

状況・手段 具体的な行為例
口頭・対面 「お前を殺す」「家に火をつける」「痛い目に遭わせる」などと直接告げる
SNS・メッセージ LINE・X(旧Twitter)・InstagramのDM等で「殺す」「晒す」「訴えてやる(虚偽の内容を)」などのメッセージを送る
手紙・メール 「次に会ったら何をするかわからない」「お前の職場に怒鳴り込む」などの内容を送付する
元交際相手への脅し 別れ話の際に「別れるなら写真をばらまく」「会社に電話する」などと告げる
ネット上での投稿 特定の人物を名指しして「次に見たら何をするかわからない」などと不特定多数が見られる形で投稿する

📌 「冗談だった」「送ったが取り消した」は通用しない場合があります

脅迫罪は、相手が実際に恐怖を感じたかどうかを問わない犯罪です。「冗談のつもりだった」「感情的になっただけだ」という主張は、内容が客観的に畏怖させるに足るものであれば、成立要件に影響しません。またメッセージを送信後に取り消した場合でも、相手がすでに閲覧していれば既遂が成立します。スクリーンショットや送信履歴は証拠として残ります。

強要罪とは(刑法第223条)

刑法第223条(強要)

第1項 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、 3年以下の拘禁刑に処する。

強要罪は、脅迫や暴行を手段として、相手に「義務のないこと」をさせる、または「権利の行使を妨害する」犯罪です。金品を要求する恐喝罪とは異なり、行為の強制(土下座・謝罪文の署名・画像の削除等)が目的です。

強要罪の典型的な事例

行為の例 備考
土下座の強要 「謝らないと痛い目に遭わせる」と脅して土下座させる。SNSで動画化・拡散した場合は侮辱罪・名誉毀損罪も問題になりうる
画像・動画の削除要求 「削除しないと訴える(虚偽内容)」「拡散する」と脅して画像・投稿を削除させる
謝罪文・示談書への署名強要 脅迫や暴力を背景に自分に有利な文書へのサインを強制する
退職・転校の強要 「やめなければ何をするかわからない」と脅して職や学校を辞めさせる
権利行使の妨害 「告訴したら家族に何をするかわからない」と脅して被害届・告訴の提出を妨害する

恐喝罪とは(刑法第249条)

刑法第249条(恐喝)

第1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、 10年以下の拘禁刑に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

恐喝罪は、脅迫・暴行を手段として相手に金品を出させる(1項恐喝)、または債務の免除など財産上の利益を得る(2項恐喝)犯罪です。脅迫罪との最大の違いは「金品・財産上の利益の要求・取得」が行為の目的・結果に含まれる点です。

恐喝罪の典型的な事例

状況 行為の例 備考
いわゆる「カツアゲ」 「殴られたくなければ金を出せ」と脅して現金を出させる 暴力の程度が強く「反抗を抑圧する程度」に達すると強盗罪になる
元交際相手への金銭要求 「別れた腹いせに職場にばらす」「写真を拡散する」と脅して金銭を要求する 写真・動画を使った脅しはリベンジポルノ(性的画像記録の不正提供等の処罰に関する法律)違反とも重なる場合がある
SNSでの脅迫+送金要求 「〇〇の写真をばらまく」「誹謗中傷を投稿し続ける」と脅して電子マネー等を送らせる 近年急増している手口。証拠が電子的に残るため立件されやすい
2項恐喝(借金のチャラ要求等) 「痛い目に遭わせる」と脅して貸金の返済を免除させる、約束した報酬を支払わないよう強要する 財物(現金・物品)でなく債務免除・利益の供与も恐喝罪の対象
みかじめ料・不当な請求 暴力団関係者等が「みかじめ料」「示談金」として脅迫を背景に金銭を要求する 組織的背景がある場合は組織犯罪処罰法が適用される場合もある

⚠ 恐喝罪と強盗罪の境界——脅しの「程度」が分かれ目

恐喝罪と強盗罪は、脅迫・暴行の「程度」によって区別されます。 相手の反抗を抑圧するに足る程度の脅迫・暴行を用いて財物を奪った場合は強盗罪(5年以上の有期拘禁刑)となります。恐喝罪は「反抗を抑圧しない程度の脅迫」が要件です。この境界は具体的な状況によって判断されるため、自分では恐喝のつもりでも強盗罪として立件されるケースがあります。弁護士による事実関係の精査が重要です。

SNS・ネット上の脅迫——近年急増する手口

SNS・メッセージアプリを通じた脅迫・恐喝は近年急増しており、捜査機関も積極的に取り締まっています。オンラインでの行為であっても、脅迫罪・恐喝罪が成立する点に変わりはありません。

オンライン上の脅迫の特徴と注意点

特徴 内容
証拠が残りやすい メッセージ・投稿・送金履歴はスクリーンショットや通信履歴として残り、消去・取消しをしても相手に保存されている場合がある。証拠隠滅が困難で立件されやすい
発信者情報の特定 匿名アカウントや別端末を使った場合でも、プロバイダへの発信者情報開示請求・IP追跡によって身元が特定されるケースが多い
被害者が複数になりやすい 不特定多数に対して脅迫的な投稿を行った場合、複数の被害者が存在することになり罪数・量刑に影響する
関連法令の競合 名誉毀損罪・侮辱罪・プロバイダ責任制限法・リベンジポルノ防止法等が同時に問題になる場合がある。適用される罪名によって処分の内容が異なる

リベンジポルノを使った脅迫・恐喝

元交際相手の性的画像・動画を「ばらまく」「SNSに投稿する」などと脅す行為は、脅迫罪・恐喝罪(金銭を要求した場合)に加えて、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)」違反も問題となります。

行為 適用される罪 法定刑
「ばらまく」と脅すのみ(金銭要求なし) 脅迫罪 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
「ばらまく」と脅して金銭を要求 恐喝罪(+脅迫罪は吸収) 10年以下の拘禁刑
実際に画像を第三者・ネットに提供・公開 リベンジポルノ防止法第3条 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
脅しに加えて実際に画像も送付・投稿 脅迫罪または恐喝罪+リベンジポルノ防止法違反 各罪の刑が併せて問われる

ストーカー・DV・住居侵入との関連

脅迫罪・恐喝罪は、単独で発生するケースだけでなく、ストーカー行為・DV・住居侵入などと複合して問題になるケースが多くあります。複数の罪が重なることで処分が重くなります。

組み合わせのパターン 問題となりうる罪
元交際相手に「復縁しないと傷つける」と繰り返し連絡 脅迫罪+ストーカー規制法違反(つきまとい等・連続送信)
別れ話の際に相手を殴りながら「金を返せ」と要求 傷害罪+恐喝罪(または強盗致傷罪)
配偶者・交際相手に対する暴力と「出て行ったら何をするかわからない」という脅し 暴行・傷害罪+脅迫罪・強要罪(DV防止法上の接近禁止命令の問題も生じる)
元交際相手の自宅に無断で入り込み脅迫する 住居侵入罪+脅迫罪(牽連犯として重い罪の刑で処断)
「告訴すれば子供に何をするかわからない」と被害者の権利行使を妨害 強要罪(権利行使の妨害)

📌 DV・ストーカー絡みの事案は被害者への直接接触が禁物

元交際相手・配偶者が絡む脅迫・恐喝事案では、本人・家族が被害者に直接謝罪・示談を申し入れようとすることで、状況が悪化するリスクがあります。接触禁止命令・保護命令が出ている場合はその違反にもなります。被害者への連絡・示談交渉は必ず弁護士を通じて行ってください。

弁護士にできること

  • 罪名の整理——脅迫罪・恐喝罪・強要罪のいずれが問題か
    どの罪名が適用されるかによって法定刑・弁護方針が大きく異なります。弁護士が事実関係を精査し、適用罪名の確認と、より軽い罪名の適用を主張する方針を立てます。特に恐喝罪と強盗罪の境界、脅迫罪と恐喝罪の区別が重要な争点になるケースがあります。
  • 被害者への謝罪・示談交渉
    被害者に誠意ある謝罪の意を伝え、示談交渉を進めます。脅迫罪・恐喝罪・強要罪は親告罪ではないため示談成立だけで起訴を阻止することはできませんが、示談の成立・被害者の宥恕は不起訴処分・執行猶予獲得の重要な事情となります。DV・ストーカー絡みの事案では被害者への直接接触を避け、弁護士が慎重に交渉します。
  • 逮捕・勾留リスクの把握と早期対応
    警察から連絡が来た・任意出頭を求められた段階で弁護士に相談することで、逮捕リスクへの対応・取り調べ方針の決定・示談交渉の開始を早期に進めることができます。
  • 供述方針の決定——不用意な自白を防ぐ
    「脅したつもりはなかった」「冗談だった」「メッセージを消した」など、事実関係の主張の仕方によって処分が変わります。取り調べ前に弁護士が事実関係を整理し、供述の方針を決定します。
  • 不起訴処分・略式命令(罰金)の獲得
    脅迫罪は罰金刑があるため、初犯・軽微な事案では略式命令(罰金)での解決も目指せます。示談の成立・反省の状況・再犯防止策を検察官に示し、不起訴または略式命令の実現を目指します。恐喝罪・強要罪は罰金刑がなく起訴されれば正式裁判となるため、起訴前の示談成立が特に重要です。
  • 否認事件——「脅迫の故意がなかった」「恐喝には当たらない」の主張
    メッセージの文脈・当事者の関係・当時の状況から、脅迫の故意がなかった・客観的に畏怖させるに足る程度ではなかった・恐喝の要件を満たさないという主張を行います。

よくある質問

Q. 「殺すぞ」とLINEで送ってしまいました。逮捕されますか?

脅迫罪が成立する可能性があります。LINEのメッセージも脅迫罪の「告知」にあたります。相手が警察に被害届を提出すれば捜査が始まります。逮捕に至るかどうかは事案の内容・当事者の関係・証拠の状況によりますが、まず弁護士に相談し、被害者への謝罪・示談交渉を早期に進めることが最善の対応です。

Q. 感情的になって「写真をばらまく」と送りましたが、金銭は要求していません。どんな罪になりますか?

金銭の要求がなければ恐喝罪ではなく脅迫罪の問題となります。また、写真が性的なものであれば、リベンジポルノ防止法上の問題も生じる可能性があります。実際に画像を送付・投稿していなくても、「ばらまく」と脅した段階で脅迫罪が成立します。弁護士に事実関係を詳しく説明してください。

Q. お金を返してもらうために「返さないと告訴する」と言いました。恐喝罪になりますか?

「告訴する」という告知が「害悪の告知」に当たるかどうかは、内容によって判断が分かれます。正当な権利(貸したお金を返すよう求める)の行使を目的としており、告訴の内容が虚偽でなければ、脅迫罪・恐喝罪が成立しないケースもあります(権利行使と認められる場合)。一方、返済額を大幅に超える請求や、虚偽の内容での告訴を示唆した場合には恐喝罪が問題となりえます。具体的な状況を弁護士に確認してください。

Q. 相手が先に自分に対して嘘をついたり被害を与えたりしました。腹いせに脅してしまいましたが、情状として考慮されますか?

相手方の先行行為(相手がした嘘・被害)は、脅迫罪・恐喝罪の成立を否定する事情にはなりませんが、動機・経緯として量刑上の考慮事情となる場合があります。ただし、報復目的の脅迫・恐喝は悪質と評価されることもあるため、弁護士が事実関係を整理した上で方針を立てることが重要です。

Q. 示談が成立すれば起訴されませんか?

脅迫罪・恐喝罪・強要罪はいずれも親告罪ではないため、被害者との示談が成立しても検察官の判断で起訴することは可能です。ただし、示談の成立・宥恕の取得は不起訴処分を判断する上で最も重要な考慮事情の一つです。弁護士が示談成立の事実を検察官に積極的に示すことで、不起訴処分の実現を目指します。