在宅事件(身柄拘束なし)への対応

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在宅事件(逮捕なし・任意捜査)|警察から呼び出された・書類送検された方へ

「警察から電話で呼ばれた」「捜査を受けているらしいが逮捕はされていない」「書類送検されたと連絡があった」——このような状況にある方は、 在宅事件(ざいたくじけん)として捜査が進んでいます。

逮捕されていないため「大丈夫だろう」と感じやすいですが、在宅事件であっても起訴されれば刑事裁判になり、有罪判決を受ければ前科がつきます。また、捜査が進んだ段階で突然逮捕される可能性もあります。 取り調べを受ける前に弁護士に相談することが、最も重要な対応です。

在宅事件とは

刑事事件の捜査には、被疑者(疑いをかけられた人)の身柄を拘束して行う「身柄事件」と、身柄を拘束せずに行う「在宅事件」の2種類があります。

在宅事件では、被疑者は日常生活を続けながら、警察・検察から必要に応じて呼び出しを受け取り調べに応じます。身柄事件(逮捕・勾留)に比べて日常生活への影響は小さいものの、最終的に起訴・不起訴が決まるまでは刑事事件の被疑者という立場は変わりません。

在宅事件になる主なケース

警察が逮捕を行わず在宅のまま捜査を進めるのは、主に以下のような場合です。逮捕の要件である「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」が低いと判断されたケースが中心です。

在宅事件になりやすいケース 具体例
犯罪が比較的軽微な場合 軽微な万引き(初犯)・器物損壊・軽い暴行・道路交通法違反など
被疑者の身元が明確な場合 住所・職業・家族関係がはっきりしており、逃亡のおそれが低い
証拠がすでに固まっている場合 防犯カメラ映像・物的証拠が確保済みで証拠隠滅のおそれがない
被害者と面識のない事件 被害者への接触・働きかけのおそれが低い事案
後日発覚した事件 事故・事件から時間が経過してから捜査対象になったケース

⚠ 在宅事件でも起訴されれば前科がつきます

在宅事件は逮捕されないため「軽い扱いになる」と思われがちですが、それは誤りです。在宅事件でも、検察官が起訴と判断すれば 公開の刑事裁判となります。有罪判決を受ければ逮捕された場合と同様に 前科がつき、就職・資格・在留資格等に影響が生じます。在宅事件を軽く見ることは、最も危険な判断です。

身柄事件(逮捕あり)との主な違い

比較項目 在宅事件(逮捕なし) 身柄事件(逮捕あり)
身柄拘束 なし(日常生活を継続できる) あり(逮捕・勾留で最大23日間拘束)
捜査の期間 期間制限なし。数ヶ月〜1年以上かかることも 警察の捜査は逮捕後48時間以内に送検
送検の方法 書類送検(資料のみ検察へ送付) 身柄送検(身柄と資料を検察へ送付)
検察の期間 期間制限なし。通常2〜3ヶ月かかることが多い 送検後24時間以内に起訴・釈放・勾留請求を決定
取り調べの拘束力 任意(出頭を拒否・途中退去が法律上可能) 義務(逃走・退去は許されない)
職場・家族への影響 比較的小さい(日常生活を続けられる) 大きい(長期欠勤・家族との分離が生じる)
精神的負担 長期間「いつ呼ばれるかわからない」という不安が続く 拘束期間は短期集中だが、外部との連絡が制限される
弁護士への相談タイミング 呼び出しを受けた段階・発覚した段階が最重要 逮捕直後の接見が最重要

📌 在宅事件特有の「長期的な不安」に注意

在宅事件の大きな特徴は、 いつ手続きが終わるか見通しが立たないことです。警察の捜査から書類送検・検察の処分決定まで、全体で半年から1年以上かかるケースも珍しくありません。その間、「呼ばれるのはいつか」「起訴されるのか」という不安の中で日常生活を送ることになります。弁護士が関与することで、手続きの状況を把握し、不安を軽減することができます。

在宅事件の手続きの流れ

在宅事件は以下の流れで進みます。各段階での弁護士の介入が、結果に大きな影響を与えます。

1

警察による捜査・任意出頭の要請

警察が捜査を開始し、被疑者に電話または呼出状で任意出頭を求めます。在宅事件では警察の捜査に期間制限はなく、通常1〜3ヶ月程度かかりますが、否認・複雑な事案では半年以上かかることもあります。

※この段階が最も重要です。出頭前に弁護士に相談し、取り調べへの対応方針を決めてください。

2

警察での取り調べ(任意)

警察署に出頭し、事情聴取(取り調べ)を受けます。在宅被疑者は法律上、出頭を拒み・途中退去できますが(刑事訴訟法第198条第1項ただし書)、正当な理由なく拒否し続けると逮捕リスクが高まります。取り調べ内容は調書に記録され、後の処分・裁判で証拠として使われます。

※黙秘権(憲法第38条第1項・刑事訴訟法第198条第2項)は在宅取り調べでも行使できます。何を話し・何を話さないかは弁護士と事前に方針を立ててください。

3

書類送検(警察→検察への引継ぎ)

警察が一通りの捜査を終えると、被疑者の身柄を送らずに捜査資料のみを検察官に送付します。これを「書類送検」といいます。書類送検の段階で担当検察官が決まります。書類送検の事実がメディアに報じられる場合があります。

※警察から「次は検察から連絡が来ます」と言われたら、書類送検の段階に入ったと考えてください。

4

検察での取り調べ・追加捜査

書類送検後、検察官から呼び出され検察庁での取り調べを受けます。検察官は警察の捜査記録を確認した上で追加の捜査・聴取を行い、起訴するか不起訴にするかを判断します。この段階も期間制限はなく、通常2〜3ヶ月かかります。

※弁護士は検察官に対して不起訴処分を求める意見書・資料を提出します。

5

起訴・不起訴の決定

被害の程度・示談の有無・前科・反省の状況・事件の悪質性などを総合的に考慮して、検察官が起訴するかどうかを決定します。不起訴であれば前科はつかず、手続きはここで終了します。

※在宅事件では、弁護士が早期に動くことで不起訴処分の実現を目指すことができます。

6

在宅起訴・刑事裁判(起訴された場合)

起訴された場合は、身柄を拘束されないまま刑事裁判(在宅起訴)が行われます。起訴された時点で刑事裁判は確定しており、日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えます。裁判中も日常生活を続けることはできますが、公開の法廷で裁判を受けることになります。

※在宅起訴後の国選弁護人は選任までに時間がかかり、弁護士を選ぶことができません。より積極的な弁護活動を希望する場合は、私選弁護人への依頼が必要です。

任意出頭への対応と黙秘権——出頭前に必ず弁護士に相談を

任意出頭は「断れる」が「断り続けると危険」

在宅事件の取り調べは任意です。刑事訴訟法第198条第1項は「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる」と定めており、法律上は出頭を断ることも途中で帰ることも認められています。

刑事訴訟法第198条第1項(任意出頭・退去の自由)

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。 但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

ただし、正当な理由なく出頭を拒否し続けることは、「逃亡・証拠隠滅のおそれがある」と判断されて逮捕状が請求されるリスクを高めます。任意出頭の要請を受けた場合は、断るのではなく、まず弁護士に相談した上で対応方針を決めることが重要です。

黙秘権——何を話し・何を話さないかを決める権利

取り調べでは、黙秘権(憲法第38条第1項・刑事訴訟法第198条第2項)を行使する権利があります。自分に不利になる内容を話す必要はなく、すべての質問に答えなければならないわけではありません。

刑事訴訟法第198条第2項(黙秘権の告知義務)

前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、 自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
黙秘の種類 内容 考え方
完全黙秘 すべての質問に対して一切答えない 事実関係が複雑・否認事件・供述が不利になる可能性が高い場合に有効。反省の態度が伝わりにくいというデメリットもある。
一部黙秘 特定の質問・事項についてのみ答えない 事実は認めるが、不利な事情(共犯者・動機等)については答えないケース。弁護士との方針設定が重要。
全面供述 すべての質問に誠実に答える 事実を認めて反省の姿勢を示す場合。ただし供述内容が調書に残り証拠となるため、不用意な発言は禁物。

⚠ 取り調べでの発言はすべて調書に記録されます

取り調べ中の発言は調書として記録され、後の起訴・不起訴の判断や裁判での証拠として使われます。「正直に話せば許してもらえる」「軽い気持ちで答えた」という内容が、後に大きな不利益につながることがあります。 取り調べを受ける前に必ず弁護士に相談し、何を話し・何を話さないかの方針を立ててください。

在宅事件でも「突然逮捕」されるリスクがあります

在宅事件として捜査が進んでいる間も、状況が変わると突然逮捕される可能性があります。「ずっと在宅だから大丈夫」という判断は危険です。以下のような行動・状況が逮捕リスクを高めます。

逮捕リスクが高まる行動・状況 理由
任意出頭の要請を無視・拒否し続ける 逃亡のおそれがあると判断され、逮捕状が請求されやすくなる
被害者に直接連絡・接触しようとする 「被害届の取下げを求める」「証言を変えさせようとする」と評価され、罪証隠滅のおそれと判断される
共犯者・関係者と連絡を取る 口裏合わせ・証拠隠滅のおそれとして評価される
証拠となりうる物を処分・隠匿する 直接的な証拠隠滅行為として最も逮捕リスクが高い
居所が不明になる・連絡がつかなくなる 逃亡のおそれがあると判断される
事件が重大化・余罪が発覚する 新たな被疑事実の発覚により改めて逮捕の必要性が生じる

⚠ 被害者への直接連絡は絶対にしないでください

在宅事件中に「直接謝りたい」という気持ちから被害者に連絡を取ることは、 罪証隠滅のおそれがあると判断され逮捕リスクを大幅に高める行為です。被害者への謝罪・示談交渉は必ず弁護士を通じて行ってください。

在宅事件で不起訴を目指すために——早期対応の重要性

在宅事件では、手続きに時間制限がない分、弁護士が早期に動くことで不起訴処分の実現に向けた準備を十分に行えるというメリットがあります。身柄事件の23日間という短期決戦とは異なり、丁寧な弁護活動が可能です。

被害者への早期示談——最も重要な弁護活動

被害者がいる事件(暴行・器物損壊・窃盗・詐欺等)では、弁護士を通じた早期の謝罪・弁償・示談交渉が最重要です。示談が成立し被害者が宥恕(許す意思)を示している場合、検察官は不起訴処分を選択する可能性が高まります。在宅事件では示談交渉の時間を確保しやすく、この点は大きなアドバンテージです。

検察官への働きかけ

弁護士は、被疑者の反省の状況・示談の経緯・生活環境の改善・再犯防止策などをまとめた不起訴意見書を検察官に提出します。書類送検後の検察官による処分決定に向けて、有利な事情を積極的に伝えることが弁護活動の核心です。

被害者のいない事件(薬物・交通違反等)での対応

被害者が存在しない事件(薬物・飲酒運転等)では示談による解決はできませんが、深い反省・再犯防止のための取り組み(通院・プログラム参加等)・家族の監督体制の整備などを検察官に示すことで、不起訴・軽い処分の実現を目指します。

📌 在宅事件こそ弁護士への早期相談が結果を変えます

在宅事件では「まだ逮捕されていないから」「どうせ呼ばれるまで待つしかない」という判断で放置されがちです。しかし、呼び出しを受ける前から弁護士が動くことで、 被害者への早期示談・証拠の整理・取り調べ方針の決定・検察官への積極的な働きかけという多くの対策を先手で打つことができます。発覚した段階でのご相談をお勧めします。

弁護士にできること

  • 取り調べ前の方針決定——何を話し・何を話さないか
    警察・検察への任意出頭前に相談を受け、事実関係の整理・黙秘権の行使範囲・供述の方針を具体的に決定します。出頭前の相談が最も重要な弁護活動の一つです。
  • 手続きの進捗の把握と報告
    在宅事件では「今どの段階にあるか」がわかりにくく、長期の不安が続きます。弁護士が捜査の状況を把握し、ご本人・ご家族にわかりやすく報告することで、不安を軽減します。
  • 被害者への謝罪・示談交渉
    被害者への直接連絡はリスクがあります。弁護士が間に立ち、誠実な謝罪と弁償を伝え、示談交渉を進めます。書類送検前の示談成立が最も効果的であり、早期の着手が重要です。
  • 逮捕リスクの回避——やってはいけないことの整理
    被害者への直接連絡・証拠となりうる物の処分・関係者との連絡など、在宅中に逮捕リスクを高める行動についてアドバイスします。知らずにやってしまうと突然逮捕につながります。
  • 検察官への不起訴意見書の提出
    書類送検後の検察官に対して、示談の成立・反省の状況・再犯防止への取り組みをまとめた意見書を提出し、不起訴処分の実現を目指します。不起訴であれば前科はつきません。
  • 在宅起訴後の弁護——執行猶予・軽減を目指す
    起訴された場合でも、私選弁護人として引き続き弁護活動を行います。被害弁償・示談・反省の状況を法廷で示し、執行猶予付き判決の獲得を目指します。

よくある質問

Q. 警察から電話が来ました。必ず行かなければなりませんか?

在宅被疑者への出頭要請は任意であり、法律上は拒否する権利があります(刑事訴訟法第198条第1項ただし書)。ただし、正当な理由なく拒否し続けると逮捕リスクが高まります。「行く前に弁護士に相談したい」という理由で日程を調整することは可能です。まず弁護士に連絡し、出頭の方針・日程を決めた上で対応することをお勧めします。

Q. 黙秘権を使うと逮捕・起訴されやすくなりますか?

黙秘権は憲法・刑事訴訟法によって保障された正当な権利であり、その行使が直ちに逮捕・起訴の理由になることはありません。ただし、黙秘を選んだ場合に反省の態度が伝わりにくくなるというデメリットもあります。黙秘権を行使すべきかどうかは、事案の内容・証拠の状況・弁護方針によって異なりますので、弁護士と事前に十分相談してください。

Q. 書類送検されたと聞きました。これはどういう意味ですか?

書類送検とは、警察が捜査を一通り終え、身柄を拘束せずに捜査資料を検察官に引き継いだことを意味します。この時点で担当検察官が決まり、検察官による取り調べ・追加捜査が行われた後、起訴・不起訴の判断がなされます。書類送検は捜査の一段階であり、起訴や有罪が確定したわけではありません。書類送検後も弁護士を通じた不起訴に向けた活動は可能です。

Q. 在宅事件でも国選弁護人はつきますか?

在宅事件では、起訴前(捜査段階)の国選弁護人制度は原則として利用できません。国選弁護人が選任されるのは起訴された後(または身柄拘束を伴う一部の事件)です。つまり捜査段階では、弁護士費用を自ら負担する私選弁護人に依頼するか、弁護士なしで対応するかという状況になります。起訴前の段階での弁護士の関与が最も重要なのに、国選では対応できないという点に注意が必要です。

Q. 在宅事件はいつ終わりますか?

在宅事件の捜査・処分決定までの期間は法律上の制限がなく、事案によって大きく異なります。軽微な事案では数ヶ月で処分が出ることもありますが、複雑な事案・否認事件・共犯者が多い事案では半年から1年以上かかることもあります。弁護士が関与することで手続きの状況を把握しやすくなり、早期の示談成立によって手続きが早まる場合もあります。

Q. 逮捕されていないので弁護士は必要ないですよね?

逮捕されていない場合こそ、弁護士への早期相談が重要です。逮捕されると取り調べは即日始まり、弁護士への相談機会が限られます。在宅事件では取り調べの前に相談できるため、より準備が整った状態で対応できます。また、示談交渉・逮捕リスクの回避・検察官への働きかけは、早く着手するほど効果的です。「逮捕されていないから大丈夫」ではなく、「逮捕される前だからこそ相談する」という判断が、最善の結果につながります。